調査研究セクター

物質依存・嗜癖ユニット

ユニットリーダー:丸山 泰弘
(立正大学 法学部 法学科 准教授)

2016年4月にニューヨークで開催された国連薬物問題特別総会(UNGASS)は、「刑事司法を中心とした薬物依存対策が人権侵害にあたる」と宣言し、各国に大麻等の自己使用・少量所持等の合法化などを求めた。いまや、世界の薬物政策は、「薬物との戦争」から、「当事者の回復支援」に向っている。日本の薬物問題の9割以上は覚せい剤であり、自己使用と所持の厳罰政策は、薬物依存症者を犯罪者にしてしまったという「負の歴史」をもつ。しかし、 近年、官民一体となって促進してきた、回復支援政策は、一定の成果を上げている。

本研究は、覚せい剤を中心とする薬物依存回復支援を「日本型薬物政策」として確立し、日本全国に普及させるとともに、東アジア地域における回復支援グループとも連携して、日本型回復モデルを国際的に展開していく基盤を形成する。

主な実施項目

  • 世界における厳罰主義、ダイバージョンおよびハーム・リダクションの各政策の現状と課題について調査研究を実施する。
  • 海外の薬物関連学会や専門家向け研修会で物質依存に対する“えんたく”構想を発表し、東アジアに回復支援のネットワークを構築する。
  • 米国を中心とするドラッグ・コートと欧州を中心とするハーム・リダクションなどの物質依存・嗜癖からの回復のための挑戦的試みの調査研究を実施する。
  • 非規制薬物の依存・ 嗜癖問題についての調査研究を実施する。
  • 一部執行猶予等現行法制度の枠組みの中てにおける新たな回復支援を開発する。
  • 「薬物依存者回復支援(Drug Addicts Recovery Supports:DARS)」の回復支援者養成セミナーを開催し、日本型の回復支援プログラムと薬物政策を構築し、日本社会への実装とその東アジアへの発信をめざす。
  • これまでの薬物依存からの回復のための研究や実践の成果を踏まえた新たな回復支援プログラムを開発し、学会報告、学術論文、研究書物等を通じて成果を発表するとともに、回復プログラムの担い手を育成するための回復プログラムの研修カリキュラム・教材を開発し、研修等を通じてその普及に努める。
  • 世界的に見ても、覚せい剤のようなアッパー系物質への依存・嗜癖からの回復モデルは未開拓であるので、この30年間、先進的な試みを開発してきたDARC等の民間団体と公的機関の協働体制を日本型回復モデルとして開発し、DARS研修等を通じて、東アジアの覚せい剤汚染地域に回復モデルを普及させ、新たなステークホルダーを開拓するとともに、これらの地域の拠点ともゆるやかなネットワークを構築する。

調査研究セクター

ギャンブリングユニット

研究員:西村 直之
(リカバリーサポート・ネットワーク 代表理事/精神科医)

ギャンブリング障害の現状の対策を明らかにするとともに、地域生活者としての日本型ギャンブリン障害の問題解決・回復支援のあり方に関する調査研究と支援ネットワークの社会的展開をざす。

ギャンブリング問題は、概念の整理も途上にあり、実態も不明確で、その対策も世界各国で試行錯誤が繰り返されているので、まず、日本のギャンブリング障害対策の前提となる概念を統一する。

日本にはパチンコをはじえめとする独自のギャンブリング文化があり、日本の地域性や国民性を踏まえた対策が必要である。地域の中におけるギャンブリング問題を、地域の公的・私的社会資源の包括的な活用と連携によって介入し、問題解決に導く支援の地域生活者としての日本型ギャンブリング障害の問題解決・回復支援のあり方を明らかにする。

主な実施項目

  • 世界および日本におけるギャンブリングとギャンブリング障害概念、本邦におけるギャンブリング障害に対する医療・司法・福祉の対策の現状と課題について調査する。
  • 個々の地域での生活再建を重要視しながらギャンブリング問題を持つ人の問題解決・回復支援、生活支援を行なう民間団体(NPO法人ワンデーポート、ホームレス支援団体など)の支援活動の実態調査を行ない、問題解決支援に必要な社会資源を開拓し、回復プログラム等を開発する。
  • これまでのギャンブリング障害に関する研究や実践の成果や課題、諸外国の新たな視点・実践を踏まえた日本型ギャンブリング障害対策の理論化を行い、学会報告、研究書物、報告会などを通じて成果を発表するとともに、回復プログラムの担い手を育成するために、回復プログラムの研修カリキュラム・教材を開発し、研修等を通じてその普及に努める。
  • 物質依存・嗜癖ユニットと合同研修会を開催し、先発ユニットのメソッドを共有し、より発展的な回復モデルを開発し、新たなステークホルダーを開拓する。