2021年11月2日、龍谷大学犯罪学研究センターとATA-net研究センター共催で、第10回ティーチイン「大麻とCBD」をオンラインで開催し、約70名が参加しました。今回は、外務省等でテロ対策や治安情勢分析をご専門にされ、現在はイギリスのCBDベンチャー企業であるAlways Pure Organics の日本法人Always Pure Organics Japanの代表取締役である吉田智賀子さんから、イギリスよりオンラインでご報告いただきました。CBDが注目される理由を、拡大する英国および欧州市と法規制等の観点からお話いただき、同センター長石塚伸一教授、木津川ダルク代表の加藤武士さんを交えて、質疑応答が行われました。
目次
1.CBD市場の動向
2.医療用大麻と政策
3.持続可能な大麻政策に向けて
4.持続可能な大麻政策
5.おわりに—国際社会と大麻—
質疑応答(一部抜粋)

▲写真①:吉田智賀子さん
▲写真①:吉田智賀子さん

1.CBD市場の動向
(1)イギリス—投資がアツい大麻産業—
大麻市場の動向ですが、皆さんニュースなどで色々な大麻市場に関する話を聞くかと思います。Evening standardというイギリス新聞の2021年10月7日付「The A-list weed-preneurs cashing in cannabis(A級セレブ・ウィード企業家がカンナビスで金儲け)」という露骨なタイトルの記事があります。ジャスティンビーバーやJAY-Zなどが、こぞってカンナビスのブランドを立ち上げて、大麻産業に投資をしているという事が記事の内容です。また、イギリスの元サッカーイングランド代表のデイビット・ベッカムが「デイビット・ベッカム・ベンチャーズ・リミテッド」という会社を持っているのですが、この会社が「セルラー・グッズ」というイギリスのCBDベンチャー企業に投資をしているのですね。さらに、この「セルラー・グッズ」が2021年の2月にロンドンの証券取引所に上場した初日に、デイビット・ベッカムの名前のだけで株価が310%上昇して、時価総額が2,500万英ポンドと約38億円近くに跳ね上がったというニュースもイギリスで飛び交いました。
(2)世界全体のC B D市場—拡大する経済シェア—
今回は、Global Market Insights<https://www.gminsights.com/industry-analysis/cannabidiol-cbd-market>というマーケティング会社が分かりやすいデータを出していたのでそれを拝借して説明させて頂きます。2020年のCBDの市場は28億米ドル~71億米ドル、日本円に換算すると、約3000億円~8000億円規模だと推定されています。この市場規模が2027~2028年には、134億米ドル~1080億米ドル、日本円に換算すると約1.5兆~12兆円規模まで拡大して、年平均成長率は21%~35.7%と見込まれています。
世界の市場シェアは、北米が4割から6割と最大、続いて欧州が3割から4割、南米、中国日本を含むアジア太平洋地域、中東及びアフリカ地域という感じになっています。2021年~2027年の大麻製品別の市場シェアは、図の通り(写真②)、オイルやカプセルなどが大幅に伸びることが予想・指摘されています。2027年のマーケットシェアとしては、マリファナが307億米ドル、約3.5兆円規模になるだろうと推測されています。また、慢性疼痛にかかるものが365億米ドル、約4.1億円規模、そして、ティンクチャーは364億米ドルと約4兆円規模の市場に成長すると見込んでいます。
こういったことから、北米及び欧州新興株式市場にはCBD製品を取り扱う企業や技術メーカー等の数も増えていて、これら企業がアメリカのセレブや投資家たちの有望な投資対象となっているという現状があります。

▲写真②
▲写真②

(3)CBD商品の多様さ手軽さ—欧州市場の事例から—
州市場ではどうなっているかと言いますと、CBDを使った多種多様な商品が出てきています。先般、ちょうどフランス首都パリで行われたカンナビス関連の展示会に行ってきたのですが、いわゆる大麻のバッズ、日本でいうところの花穂、英語でいうところのフラワーが一番人気で、各社こぞってフラワーを売っているという現状がありました。また、日本でいうところのアイコスみたいな燃やさずにCBDタバコ吸うことが出来る製品も欧州でも出てきています。そのほか、マイナーカナビノイドを使った色々な製品ですとか、コスメ、グミなど多種多様なCBD製品も出てきています。
さらに、商品が多様化しているだけでなく、これらの商品はスポーツ用品店などでも取り扱われています。例えば、Sports Directというイギリスではメジャーなスポーツ用品店などでも、これらのCBD製品が取り扱われています。またクロアチアにいった時に見つけたものですが、日本でいう自動販売機でこれらのバッチやグミといったCBD製品が24時間いつでも購入できます。そして、なんとBitcoinと連携しているビジネス形態もあり、今後の仮想通貨の価値を見据えて投資も兼ねたビジネス戦略なのだろうと思います。

(4)日本のCBD市場
日本のCBD市場がどうかというと、これはまだ資料が殆どないので、皆さんに対する聞き取りやごく僅かな資料、メディアが言っているものを数値に纏めたものを用いて解説していきます。
今の日本のCBD市場は、大体40~100億円規模だと言われています。2024年ぐらいには880億円ほどの規模になるのではないかと予想するメディアもありました。また、CBDを取り扱っている会社は200社以上で、主に、楽天などのECプラットホームなどで取り扱われているという見方が一般的です。
外国から見た日本は、CBD製品を取り扱う外国企業が参入できない、参入しづらい国として見られることが多いです。コロナで入国の規制がされてなかなか入国できないという理由もありますが、原因はコロナだけでなく、2022年に大麻取締役法が一部改正されると言われているものの、本当に法改正をするのかどうか分からない点や、FMCG(=Fast Moving Consumer Goods…短期間で消費される製品)に波及させることが可能なのか先行きが不透明です。また、医療用大麻の治験開始時期がなかなか定まらず、食薬区分等の取扱いがどうなるのか不明確であることなども、日本市場が海外のCBDを取り扱う企業の参入を難しくする要因となっています。日本では2016年ぐらいに初めてCBD製品が輸入されたと言われていますが(一部では2013年という話しもあります)、現在では多くのCBD製品が日本市場にも登場していますが、日本が欧米ほど経済市場を拡大できないのは、やはり、日本の輸入の規制が厳しいことと、日本の世論の大麻に対するイメージが悪いこと、CBDの理解が乏しいこと等が挙げられると思います。

(5)2022年の大麻市場はどうなる
世界の株式市場の動向にもよりますが、ずばり投資や株価、そして合併と買収といったニュースが多く見られるのではないかと思います。アメリカの経済雑誌「フォーブス」がカンナビス製品を扱う企業を紹介しています。また、アメリカの株式市場「ナズナック」もウェブサイトで、アメリカのカンナビス製品を取り扱う「マリ・メド」という会社の株を2022年になる前に買うべし、と一押ししている感じなのですね。アメリカ各州で嗜好大麻の合法化が進むに連れて、他の業種の企業がカンナビスの企業を買収したりする傾向がより見られる様になるだろうという記事が見られています。こうしたことから、欧州でも様々な企業による買収や合併が行われることになるだろうと予想されています。

 

2.医療用大麻と政策
(1)なぜ大麻産業が急成長したのか
それは、簡単に言えば買う人が多いからです。なぜ買う人が多いかというと、多くの疾患に対して効果効能があると実感できる人が多いからだと思います。ちなみにCBD(カンナビジオール)とは、「大麻(大麻草)」に含まれる生理活性物質「植物性カンナビノイド」の主要成分のひとつです。日本でも大麻やCBDに関する本が多く出ています。これだけ多くの本が出て、大麻の効果効能がエビデンスとして、薬理作用があるとわかっている。これがもう事実関係としてあるので、それに伴って市場がどんどん拡大したと私は考えています。ちなみに、精神作用が強いため悪者扱いされがちなTHC(テトラヒドロカンナビノール)ですが、THCにも食欲増進ですとか、腰痛緩和などの、薬理作用が認められています。CBDとTHCを両方摂取することで、相乗効果があることが明らかになってきているということから、THCのパーセンテージや含有量を見直すヨーロッパの国々も出てきています。
(2)ペットの治療にも有効な医療用大麻 CBD
効果効能は、人間だけでなく、動物、犬などに発症した疾患治療にも効能があることがわかっています。今の市場にはヒト用のCBD製品が多く出回っていますが、今後は、ペット向けのCBD製品に至るまで、さらに市場が拡大するだろうと考えているところです。
弊社には、チーフサイエンスオフィサーとしてチェコ人のプラハ経済大学教授の方がいます。彼が携わったプロジェクトとして、破傷風ワクチンの副作用で体が麻痺し動けなくなったジャニアという犬を治療するプロジェクトがありました。病院はあらゆる処置を施しましたが、ジャニアの状態は悪化する一方でした。安楽死も検討されていた状況下でジャニアを救ったのはCBDでした。通常、ジャニアの様な急性多発神経症では、治療に3ヶ月~6ヶ月の時間がかかるところが、CBDオイルを使用した後、約1週間で回復したのです。また犬以外にも、馬に対する効果などが確認されてきていますので、動物への使用も視野に入れて市場を注視したいと思っています。
(3)イギリスの医療用大麻政策事情
イギリスでは医療用大麻が人権問題として取り扱われています。この画像の2つの家族なのですけれども(写真③)、Guardianというイギリスの新聞が取り上げていますが、左の写真は2018年の6月にビリー君というドラべ症候群の当時12歳の少年と彼のお母さんのシャーロットさんです。シャーロットさんは息子ビリー少年のてんかん発作に効果があったCBDオイルを求めてカナダに渡ったことがニュースになりました。

▲写真③
▲写真③

シャーロットさんが2ヶ月分となる40mlの瓶7本のオイルを持ち帰ったところ、イギリスの規制のTHCの含有量を上回る2%のTHCが配合されていたことから、ロンドンのヒースロー空港の税関で没収されてしまったのです。それによって、オイルを使用出来なくなったビリー少年の容態はどんどん悪化して、集中治療室での入院の日々が続いたわけです。これがメディアに報じられて、ビリー少年を救うための特別措置を求める市民の抗議運動が広がったのです。この抗議運動のプレッシャーからですね、イギリスの内務省が、この没収したCBDオイルを返却することになったというお話です。そもそも、どうしてお母さんがカナダに行くことに決めたかというと、イギリスで手に入らないからです。2016年にアメリカでCBD製剤を用いた治療を開始したわけですが、癲癇発作が劇的に回復したことに感銘を受けたイギリスのビリー少年の主治医が、このCBDオイルをイギリスの国内でも使用することに同意した訳です。しかし、地方の医療当局が、その違法性を指摘したことで、担当した主治医が逆に処分を受ける可能性が出てきた訳です。母シャーロットさんも、主治医が犯罪者となることは願わなかったため、オイルをイギリス内で入手することは不可能となり、仕方なく合法とされているカナダ渡航を決めたという背景があります。
続いて写真③右の家族ですが、アルフィー君という当時6歳のレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群を発症した少年がいます。2017年9月にアルフィー君の両親は、息子にカンナビス治療を受けさせるために、イギリスに離れてオランダに居住したのです。それまでアルフィー君は、緊急入院を年に48回、発作を3000回以上も起こしていたのですけれども、その症状は治療開始と共に大幅に改善した訳です。ただ、オランダで国民資格保険を持たない両親は、治療資金の寄付を募るも、経済的な負担から治療を断念して、2018年の1月に帰国したわけです。そして母ハンナさんは、イギリスの超党派議員連盟に対して、大麻の薬効と必要性を訴えて、イギリスでも医療用大麻を合法化するよう訴える請願書を提出したわけです。これを受けた議連は内務省に掛け合ったのですが、「イギリスでは、医療用途のない麻薬として大麻は分類されていて、大麻の薬効のエビデンスがまだないため、処方ライセンスは発行出来ない」という回答があったわけです。これに対して、メディアが非人道的で冷酷な政治判断であるとして報じたことから大きな波紋を呼んだわけです。これらメディアや世論からのプレッシャーもあり、政府は4ヶ月後の2018年の6月にリサーチを始め、10月には審議をし、11月1日には合法化しました。この様に、スピーディーに対応したことで、イギリス政府は一定程度評価されました。
しかし、医療大麻が合法化され、これだけ多くメディアが取り上げているのですけれども、その後も患者とその家族の戦いは続いています。3年後の2021年の4月に、私もアルフィー君のお母さんハンナさんにお目にかかって話をする機会があったのですが、イギリスがEUを離脱したことで息子に必要なCBDオイルが手に入らなくなったとして、イギリス政府に再度働きかけを行うというところでした。その直後、ハンナさんなどの有志の方々が、ボリス・ジョンソン首相宛に書簡を送付したということも報じられました。
依然としてイギリスでは、国民保険による大麻の処方箋交付数は5件に留まり、医療用大麻へのアクセスは極めて限定的で、イギリスのEU離脱による輸入規制等が問題になっています。現在、イギリス国内で大麻由来の医薬品を必要としている人は約6000人と言われていますが、その患者のほとんどは自費医療を受けており、費用は毎月2000ポンド、約30万円を超える経済的な負担になっているのが現状です。
(4)日本の医療用大麻政策
公益社団法人日本てんかん協会のHPにも載っている通り、ドラベ症候群患者家族会、公益社団法人日本てんかん協会、一般社団法人日本小児神経学会、一般社団法人日本てんかん学会の4団体が、2019年9月に厚生労働大臣に対して、「CBD医薬品承認」に関する要望書を提出しています。また、弊社も支援させていただいている一般社団法人Green Zone Japanは、CBD製剤をつかった患者さんのてんかんの発作が完全消滅したという事例を紹介しています。私もGreen Zone Japan通じて、娘さんのてんかんの発作で困っておられた宮部さん家族にお目にかかりました。てんかんの発作が完全になくなったというお話しをされた時のご家族の嬉しそうな顔を見ると、やっぱりCBDって効くんだな、ということを実感せずにはいられず、感銘を受けました。宮部さん家族は、ニューヨーク・タイムズ紙にも取り上げられるなど、海外のメディアからも注目されています。また皆さんご存知かと思いますが、厚労省でも2021年1月に大麻等の薬物対策のあり方検討会が発足しましたね。その後も継続して議論が行われているわけですが、報道によれば、日本でも実用化の是非を検討するために聖マリアン医科大学等を中心に治験実施を目指した準備も進んでいるということです。

 

3.持続可能な大麻政策に向けて
恐らく多くの方が感じておられると思いますが、大麻政策は政治問題であると私は思っています。2021年春頃に、JAY-Gが米国全土に行ったキャンペーンとして、「麻薬戦争は制度的な人種差別が目的ならば成功した」という皮肉な広告を出しました。この問題は、黒人に対する人種差別政策にも関係しているという主張です。大麻の逮捕率に関しては、黒人もしくはヒスパニック系が、白人よりも4倍近く逮捕されているという報道もあります。
そんなアメリカでは、1700年~1900年ぐらいまで普通にヘンプ(産業用大麻)が栽培されていました。1900年〜1930年ぐらいに、メキシコからの移民とマリファナのイメージをくっつけて、ヘンプを悪いものだと印象付けるキャンペーンを行い、その後、ヘンプを違法なものとして扱う様になりました。しかし、2018年12月にトランプ政権が農業法を成立させて、ヘンプの商業化栽培を合法化したということがニュースになりました。それは、ヘンプやその種を麻薬取締役局の定める規制薬物から排除すると共に、その管轄を農務省に移管したというものでした。
つまりこれは、ヘンプを「農作物」として再び取り扱い始めたということです。それと同時にTHCの濃度が低い0.3%以下の品種の大麻を「カンナビス」と定義してマリファナとの差別化を図ったことも、大きな第一歩だと思いました。

 

4.持続可能な大麻政策
(1)世界とアメリカの薬物政策の歴史
世界はどうなっているかと言いますと、各国の大麻を含む違法薬物規制は、国際条約に基づいて制定されていることが多いです。歴史を振り返ってみますと、そもそも世界の薬物規制はアヘン戦争から始まったのですよね。大英帝国(イギリス)が清(中国)に対して、戦略物資として麻薬を活用したという歴史があります。どういうことかというと、大英帝国は、清にアヘンを大量に流し込んで、その国力を急速に衰弱させたと言われているのです。1870年から1890年にかけて、清国内のアヘン中毒患者が5%から20%に増加したと言われています。
そして当時、植民地政策に変わる新しい世界戦略を打ち出す契機とみたアメリカが、麻薬を戦略物資として利用するのをやめようと提案したわけです。つまり、植民地化されて疲弊した国々を独立させ、経済力を育て、自国資本の市場にしようとする戦略です。歴史を勉強した方は覚えていると思うのですけれども、1870年以降、植民地民族の民族的自覚が喚起されて、植民地独立運動が歴史の前面に現れるようになったことと、本当にタイミングが一緒なのです。
その後、1909年に上海でアヘン会議が行われて、1912年に第1回国際アヘン会議というものが開かれた。これが世界的な薬物規制の始まりですが、ここでは、大麻草というのは、統計学や科学的見地から研究することが望ましいとされていたのですけれども、1926年にもうちょっと大麻を取り締まった方がいいのではないですか?という声が上がったことで、補足条約が採択されて大麻に対する取り締まりが開始したわけです。その後時代は流れまして、1961年の麻薬に関する単一条約、1971年の向精神薬に関する条約、1988年の麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約が制定され、世界はこれら薬物の3大条約に基づいて薬物を規制する方向に向かって行きました。
1960年から70年代、アメリカでは、ニクソン政権による薬物戦争、War on drugsですとか、1980年代には、ナンシー・レーガン元米大統領夫人がJUST SAY NOというスローガンを打ち出し、ドラッグ撲滅キャンペーンが展開されたことなどにより、薬物に対する規制が強まったという経緯があります。しかし、不法薬物の取引は全然後を絶たなくて、ブラックマーケットを生み出して、そこで売買が拡大しました。不法なモノとして市場から追放されたことで逆に経済的な価値が高まったんですね。そうなると、反社会組織ですとか、反政府組織やテロリストと呼ばれる犯罪組織のビジネスチャンスとなって、その売上が、例えばテロ攻撃の資金源となるといった悪循環ともいえる構図が現在も続いているわけです。
また、1990年以降、米国では常習性の強いアヘン系の医療用麻薬、オピロイドが乱用される様になり、多くの依存者を生んでいます。その結果、1990年には過剰摂取による死亡者が約5万人にもなるなど、1日に約136人以上が死亡する社会問題にもなっています。これはオピロイドクライシスとアメリカでは言われているものです。このような薬物を取り巻く状況を鑑みてオバマ政権が2009年には、麻薬戦争という言葉をやめましょうと提言し、そして薬物の統制から薬物依存の治療支援を行うべきであるという見方を示したわけですね。また、2011年には薬物政策国際委員会が、世界の薬物戦争は失敗に終わったと断言したわけです。刑罰を与えるのではなく人権問題として考えましょうということで、各国政府に対して抜本的な薬物政策の改革を求めたことで、国際社会で薬物政策をめぐる議論が活発化しました。
その流れの中で、2018年にはWHOが、CBDは乱用や害を及ぼさないということや、科学的な根拠に基づいてCBDが有用であるという見方を示しました。2020年12月には、国連麻薬委員会が、医療や研究目的の大麻とその関連製品を最も危険な薬物分類スケジュールから削除する勧告を承認しました。こうした背景から、CBDには害はなく、カンナビスは医療用として効果があるということが、欧米では当たり前の情報として普及しているのです。つまり、これらが新常識として普及したのは、①薬物の統制と薬物戦争が失敗に終わったことが明確化して、②多くの疾患症状に効果効能があることが実証的証拠(エビデンス)で示されて、③新需要発生による経済波及効果があり、また環境にも良いことを理解したから、という3つの要因があると考えられます。
(2)環境問題と大麻
では、①と②については先程説明を行わせて頂いたので、③経済波及効果と環境という観点から大麻について解説させて頂きます。まず大麻産業の産業が細分化していることについて説明させて頂きます。再び、冒頭に引用させていただいたGlobal Market Insightsのデータによれば、現在のCBD市場には製品が10種類あります。例えば、オイルやティンクチャータブレット、そしてカプセル、ベイプなどです。そしてこれらの製品が適用される疾患症状として、不安症、不眠、疼痛などが挙げられています。また、服用方法は大きく6種類に分けられており、原料もヘンプとマリファナの2つに分かれています。販路は、店頭等で購入するオフラインとオンラインが確立されています。
この様に、現在のカンナビス産業は顧客やニーズなどの共通項によって細分化(セグメンテーション)されていることが分かります。そして、この新規産業を振興することは、新しい仕事の機会を生み出すことになる、つまり雇用創出の機会にもつながるという理論になってくるわけです。地域に関しても、北米欧州、アジア太平洋、ラテンアメリカ、中東など世界中で大麻産業が解禁されているので、グローバルなビジネスの展開が可能だということです。
この様に世界規模で拡大する大麻産業ですが、最近では「リジェネナラティブ農業(環境再生型産業)」という言葉を耳にする機会もだんだん増えてきたのではないかと思います。リジェネナラティブ農業とは、土壌の有機物を再構築し劣化した土壌の生物多様性を回復させることで気候変動を逆転させ、結果として大気中への二酸化炭素の排出と水循環の改善をもたらす農法で、気候変動対策にも繋がることが分かっています。報道によれば、先般行われたCOP26 (第26回気候変動枠組条約締約国会議)でヘンプ栽培に関しても議論されるべきだという声も市民の間から上がっているようです。また、アウトドアウェアの大手パタゴニア社ですとか、ジーンズのリーバイス社など、環境に配慮した製品作りを目指し、麻を使ったファッションを扱う企業が増え始めています。例えば、リーバイスは1990年代から環境意識の高まりとともに、SDGs、持続可能な開発目標の取り組みの一環として商品化に取り入れているようです。ヘンプはコットンと違って水を多く必要としないという性質があります。雨水だけで育ち、農薬を必要とせず土壌にも優しいというところで環境への負担が少ないということですね。あとは、成長が早いことから、コスパが良いのでコットンに代わる素材として注目を集めています。また、100%ヘンプ素材のチェコのシューズブランドBohempiaが日本にも上陸しましたね。私も購入しましたがすごく履き心地がいいので気に入っています。
(3)発展途上国と大麻
では、開発事業はどうかと言いますと、大麻が自生している開発途上国の中ではヘンプ栽培を合法化することで、経済開発事業に役立てる生活政策に舵を切った国もあります。こちらは私が以前勤務していたUNODC、国連薬物犯罪事務所が毎年出しているワールドドラックレポート、世界薬物報告書の最新版になります(写真④)。

▲写真④
▲写真④

この報告書によりますと、2015年から2019年に押収された大麻樹脂、いわゆるハシシの量は、モロッコ、アフカニスタン、パキスタン、レバノンが上位を占めています。この中でモロッコ、パキスタン、レバノンの3ヵ国がヘンプ栽培の合法化に踏み切りました。合法化することで農家の収入を増やして課税対象とし、税収を拡大させ、新規参画するベンチャー企業を通じて経済を活発化させるといった試みです。また、経済開発事業プロジェクトを立ち上げて投資を募ったり、輸入量を増やして外貨取得を増加したりする目的があります。特にパキスタンなどテロが問題になっている国では、薬物の密売組織やテロ組織から農家を切り離すことで麻薬ビジネスとテロ資金供与を防止する、そうすることで法執行機関の負担と予算を軽減し、そして警察などのマンパワーを安心安全な社会づくりのために有効活用することなども期待されています。ちなみに大麻樹脂の押収が5番目に多いイランですけれども、イランもこのヘンプ栽培の合法化を検討しているという報道も出ているぐらいです。

 

5.おわりに—国際社会と大麻—
最後に、国際社会は今後どの様な動きをしているかというところを紹介したいと思います。日本を含む国連の加盟国は、2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という持続可能な開発目標、SDGsを採択し掲げたのです。SDGsは、17のゴール、169のターゲットから構成されていますが、これは発展途上国のみならず、先進国が自ら取り組むユニバーサルで普遍的なものとすることで、地球上の誰一人も残さないということを目標としています。この中にSDGsパートナーシップという枠組みがあるのですけれども、これは市民社会と一緒に取り組んで行っていきましょうという試みです。また、カンナビスやヘンプの持続可能な開発と政策を連結させる提案「Sustainable Policy Cannabis Toolkit」というものも出ています。日本ではSDGsへの取り組みが企業間で盛んなようなので、もしご自身が今後カンナビスやCBDなどでビジネスをされる、市民生活、市民社会の取り組みに参加したいという方々にとっては、こういう切り口でビジネスとSDGsを繋げることが出来るのかというアイデアを得ることができるかと思います。例えば、SDGsゴール13の気候変動では、ヘンプを用いることで具体的な影響をもたらすことができることを提案しています。そしてゴール1の貧困をなくそうという課題では、例えば農家支援などが挙げられ、そしてゴール7のクリーンエネルギー、ゴール2の質の高い教育をみんなに提供しましょう、ゴール16の平和と更生を全ての人に、ゴール8の働きがいと経済成長、ゴール3の全ての人に健康と福祉をという課題が関連付けられています。つまり、SDGsの様々なゴールに、ヘンプやカンナビスが貢献できる可能性があるという提案をしているのです。
これまで政治的な理由からダメだとされてきた薬物が、医療や経済開発に役に立つ可能性があること否定してはならず、これらの薬物に関する間違った知識が世論に植え付けられていることが1番の問題だと私は思います。国際社会では大麻の規制緩和に踏み切る国が増えており、人権と健康そして持続可能な開発目標という枠組みで大麻が議論されています。こうした国際的な動きが日本でも多く報じられる様になれば、日本の世論に対する大麻に対する考え方も変わるのではないかと考えています。以上になります。ご清聴ありがとうございました。


質疑の一部応答(以下、敬称略)

参加者:カンナビスオイルはどの様に摂取するのですか?イメージが沸きません。

吉田智賀子:オイルの摂取は、小瓶に入ったオイルをスポイトで舌下に垂らして飲むというのが今は一般的です。あとはスプレータイプというのもありますが、オイルを舌の下に垂らすという文化があまりなく、オイルの味が苦手な方にはカプセルや、グミといった製品も出てきています。市場の拡大に伴い、これから、もっと様々な服用方法が出てくるのではないかなと思っております。先程の産業の細分化の話にもつながりますが、色々なアイデアでもっと皆さんが飲みやすい方法を開発するっていうのもビジネスチャンスに繋がるかなと私は思っています。

 

参加者:マリファナという言葉と、カンナビスという言葉と、ヘンプという言葉、全て大麻のことを指しますが、それぞれどの様な違いがあるか、簡単に定義してもらえませんか?

吉田智賀子:各国の定義によって異なりますが、まず、大きく分けて衣類などに使われる産業用大麻「ヘンプ」と、医療や嗜好に主に使われる「マリファナ」に分けることができます。なお、「カンナビス」は植物分類上の名前です。ヘンプは「産業用ヘンプ(Industrial Hemp)」と呼ばれ繊維や資材等に使用される一方で、「マリファナ」は、医療大麻(Medical marijuana)や嗜好大麻(Recitational Marijuana)等、カンナビノイド成分を重視したものとなっています。

石塚伸一:ヘンプの方は繊維が強くて椅子とか服とかを作ったりするんですね、19世紀のアメリカでは南部の方では、その耐久性からヘンプを用いた製品をいっぱい作っていて、建築用材にもなるとして用いていた。その様なタイプの大麻をヘンプと言いますね。

吉田智賀子:おっしゃる通りです。アメリカのフォード社がヘンプの車を作ったという歴史もありますね。それと、ヘンプグリードというコンクリートに代わるものというものも産業用の大麻の方から作られているというのがあります。現在は、ヘンプグリードは値段が高く用いられにくいという側面はありますが、将来的にはもっと普及していくのではないかと思っています。

石塚伸一:CBDの濃度の範囲みたいなのは、決まっているのですか。

吉田智賀子:市場に出ているCBDオイルの濃度の規制は今のところ見受けられないのですが、通常オイルで出ているものは5%、10%、20%程度で、高くても30~40%程度です。CBDの性質として、油溶性ですので濃度が高すぎると固まってきてしまうんです。CBDアイソレートと呼ばれる純度が99%以上の結晶化した原料をオイルで溶かしています。オイルの希釈濃度は高くても40%ぐらいまでとなり、それ以上になると結晶化したり塊が発生したりしてしまいます。

 

石塚伸一:CBDの摂取量についてなんですが、摂取もしていい限界量みたいなものがあるのですか。

吉田智賀子:そうですね。イギリスに関して言えば、食品基準庁というところが示しているのは、成人で体重70kgの場合で、1日70mgが目安に摂取した方が良いと言われています。しかしてんかん患者のお子さんですとかには、容態や発作の回数などによっても違うようですが、体重1キロあたり5ミリグラム(5 mg/kg)を1日1回で始めて、5〜10㎎程度増やしていくようです。

石塚伸一:医師の指導の元に、そのような高濃度のCBDを使うもしくは大量のCBDを用いるということですか。

吉田智賀子:特に疾患のある方等は、ほかの薬との飲み合わせ等もありますので、主治医や薬剤師などに相談していただくのが良いと思います。

石塚伸一:通販サイトを検索したら、CBDが売っているのですね。このことに関してはどうなのですか。全然規制はされていないように見えてなくて、区別がつかないのですが。

吉田智賀子:弊社も某通販サイトに出展しようと思い、2020年3月、一番最初に担当者の方にコンタクトさせて頂いた時は、「CBD売っても大丈夫ですよ、こういう書類をだしてくださいね」と言われていたのですが、その書類を揃えた5月には先方から、「CBDの製品は審査が通らなくなりました」と、審査さえ受け付けてくれなかったんです。しかし、最近の日本のお客様のお話を伺うと、また方針が変わり窓口が開いたようなので、日本の法改正を見込んだ動きなのかなと私は考えています。そういった事情を踏まえて、日本国内でもビジネスチャンスが広がってきたかなと思います。

石塚伸一:ということは、日本にCBDを輸入してもいいと理解しても大丈夫ですか。

吉田智賀子:はい。厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部が輸入に関するガイドラインを出しています。
https://www.ncd.mhlw.go.jp/dl_data/cbd/guidecbd.pdf

 

加藤武士:先程バッズというものが出たので、情報共有したいと思います。大麻の葉っぱの一番先端ですね。種類もいっぱいあるんですけど、サマディーとかインディカとか産地などによって色々あります。日本では「バッズ」というと隠語のような感じになっていますが。

石塚伸一:カナダとかのショップに行くとガラスケースに違う種類のものがいくつも並べて置いてありますよね、あれはバッズを見せているのですか?

加藤武士:そうです。あれはバッズを見せています。

石塚伸一:どれがいいの?って店員さんに聞いたら、「私はこれが好き」って店員さんが言っていたのが印象に残っています。好き嫌いがあるようですよね。

加藤武士:バッズによって、THCの割合とかCBDの割合とか、その他の何百種類とある大麻の成分の割合によって、その効果が変わってくるんですね。体をリラックスさせる効果が高いものが高かったり、気分がハイになる成分が高いものだったり、色々あるんですよね。これは自然なものであるからこそ、そのようなグラデイーションがあるのですけれども、その中からCBDだけを取り出してオイルなどにしているのが、吉田さんの企業のようなところですよね。

 

参加者:イギリスには日本の機能性表示食品のような製品の効果効能を謳うような食物に関する制度はありますか。

吉田智賀子:機能性表示食品とは違うとは思いますが、イギリスでは、「ノベルフード」といって新規食材を定める制度があります。このノベルフードというのは、E Uの中で1997年以前にはなかった、知らなかった食材、食用としては一般に普及していなかった食材のことを指す概念です。このノベルフードはE Uから開始して、イギリスでも2020年に食品基準庁、Food Standard Agency(FSA)が、CBD製品を販売する事業者に対して申請して許可を得ることを義務付けました。食品として販売されるCBD製品の安全性を保証するためです。ノベルフードに指定された食材や食品は、どのような成分が入っていて、どのような製造方法を用いて作られているか、残農薬や重金属、微生物等の検査が申請する際に必要で、この製造方法に基づいて製造しなければなりません。そのため、これらの食品表示等の規制はどんどん厳しくなっていて、消費者の安全衛生を重視する方になってきています。

 

石塚伸一:例えば、普通の食品でも同じようにあるわけですね?

吉田智賀子:そうですね。CBD製品に関しては、スタートアップ企業等が多く、弊社も外部のコンサルタントや製薬会社、検査機関の方等にもお手伝い頂いて申請書類を提出したわけなのです。FSAが思ったよりも申請数が多すぎて、2021年3月31日までの許可という期限が延長されていて、11月の現在でも許可された一部の製品のみが発表されているのみで、弊社を含めた200社程度の数多くの申請書はまだ審査中になっています。本来であれば2021年4月1日以降は、イギリスのBootsやHolland & Barrettといった大手のドラックストアや健康食品スーパーでは、ノベルフードの申請で許可を得ていないものは商品棚から下されるはずだったんですが、今のところ、いつになるか見通しはついていないようです。

 

石塚伸一:そのような検査や制度が出来たのは、中には悪質な製品があるという指摘があったからですか。

吉田智賀子:そうですね。やはり新しい市場では、特に法整備がまだ整っていない時にはそういった製品が市場にはあると思います。例えば、インターネットなどのITビジネスも当初そうであったように、カンナビス市場だけでなくて、どのような市場でも最初はそうなのではないかと思います。新しく開拓された市場では、新規参入者の中には残念なことに悪い人もいるので、金儲けだけをしていればそれでいいとして消費者という視点を無視して粗悪な商品を出す者も出てきてしまいます。そのため、市場が大きくなって消費者の安全性を守るためには規制が必要になるという流れだと思います。

 

石塚伸一:関連して、イーサン・ネーデルマンが日本にいらした時に講演で、「非合法化していると結局、闇市場でとんでも無いものを作って売る人が出てきてしまう。何の品質保障もしてないような製品が出てきた時に、それをわからないままに使っているということでユーザーに極めて大きな危険性がある」と主張していました。またもう一つの主張として、「闇市場での利益に対しては課税対象にならないのでギャング集団やテロ組織などの反社会勢力の収益になってしまうということからも合法化を行ってきちんとコントロールした方が良いのではないか」というものでした。今の文脈ではそういうことになりますね。

吉田智賀子:おっしゃる通りだと思います。イギリスでもリバプールはドラックで腐敗した都市でとして有名だったのですが、1970年代から80年代には闇市場が拡大したんです。売人や仲介人からドラッグを買っていた、いわゆるユーザーだった人がお金欲しさに自分が持っているドラックに半分他のものを混ぜたりして売るわけですよ。その悪循環により、元々そこまで粗悪なドラックが売られていたわけでは無かった市場で何が混ざっているかわからないものが普及していったわけです。そこでさらに犯罪が増えるとともに、健康被害といった問題が生じてきたという負の連鎖もあると思います。

石塚伸一:悪質な薬を摂取して、それで倒れた人とか救急で運ばれた人が多くいましたよね。リバプールとかマンチェスターは工業地帯ですから、そういうことが顕在化することがあるのでしょうね。

 

参加者:現在日本では大麻使用罪の導入が話題を呼んでいます。もし施行された場合規制された場合、規制対象ではTHC以外の精神作用がないとされているカンナビノイドの成分を含まれる可能性があるのでしょうか?例えば、ヨーロッパでも大麻の所持は禁止している国があって、THCはダメだがCBDはOKな国や両方ダメな国など禁止のラインは国ごとに違うのですか?

吉田智賀子:そうですね。国ごとに違いますが欧州に関しては、ほぼほぼCBDは大丈夫としている国が多いと思います。ただ、例えば、クロアチアではCBDをバッズで吸ったり化粧品の原料として使うのは良いけど、オイルなどの食用はダメという様な国もあったりするわけです。日本の市場の現状を鑑みると、CBDがダメになるということは可能性としては非常に低いと私は考えています。THCに関しては、どのくらいの含有量までを良しとするかというところが今議論されているのが私の理解なのです。食薬区分でCBDが薬品になるのではという話しもありますが、現在既に合法なものとして食品やコスメ等として市場に流通しているものですので、これが規制対象となるとひとつの産業を壊すことにもなりますし、今の段階では考えにくいかなと思っています。

 

参加者: CBG、CBN、THC Delta8、CBCA、THCVなどマイナーカンナビノイドについて知っていることがあれば教えてください。

吉田智賀子:マイナーカンナビノイドに関しては、日本にもCBGですとか、CBNなどが流通していて、特に電子タバコなどに使用されており人気であると聞いています。オンライン上でも、最近より多くの製品が出ているなということは実感としてあります。欧州の方でも、恐らくアメリカでも、マイナーカンナビノイドというのは注目されていて市場に流通していまして、おそらく2、3年ぐらい前から、CBGやTHCVなどが製造され始めていたと記憶しています。マイナーカナビノイド原料の価格はまだまだ高いので、もっと購入しやすい価格で消費と生産を循環させていくかということが、恐らく今後のマーケットの課題になってくるかと思います。CBDが数年前は日本でも欧州でも高価であったのですが、今は生産量と流通量が増えたため価格が下がっています。マイナーカンナビノイドに関しては、まだまだ「マイナー」というぐらいなので、主要なTHCとCBDの2つのカンナビノイドよりも、レアで希少なカンナビノイドなので生産量が少なくなっています。カンナビスやヘンプにはTHCとCBDの主成分以外に100種類以上のカンナビノイド成分があることが研究でわかっていますよね。しかし、含まれている量が少ないので、生産量を出すにはやっぱりまだまだコストがかかってしまう。そのためまだ市場に行き届いていないという状況です。マイナーカナビノイドの効果効能等に関してはProject CBD<https://www.projectcbd.org/ja>ですとか、日本語版でも色々とオンライン上で出ていますし、先ほど紹介した本の中にも記述があるのでそちらを見て頂ければなと思います。

石塚伸一:マイナーカンナビノイドは現在の日本でも手に入るのですか。

吉田智賀子:はい、日本でも手に入りますよ。CBGとCBNは手に入ると思います。弊社は今後、CBCですとか、他のものも可能であれば輸出したいなと思っています。まだ高価なので、在庫を沢山抱えるというのは難しいのですが。

石塚伸一:高価というのはどの程度の値段なのですか?

吉田智賀子:私が調べたところ、日本の市場価格ですと今はまだCBGアイソレートが1キロで100万円ぐらいするのではないかと思います。

 

参加者:現在は海外への輸入条件として、厚生労働省への葉や茎の写真などの証明書類の提出が義務化されていますが、日本にCBDが輸入され始めた当初は義務ではなかったと聞きました。どんどん輸入規制が厳しくなっていますが、輸入規制が緩和されることがあるのでしょうか。

吉田智賀子:私も厳しくなってきていると思います。私が一番初めに日本にCBD製品を輸入しようとした時は2019年の頭だったのですが、当時は今オンラインでも確認できる様な厚労省のガイドラインがありませんでした。今はCBDオイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ<https://www.ncd.mhlw.go.jp/dl_data/cbd/guidecbd.pdf>というガイドラインがありますよね。このガイドラインが出来たことで多くの人が輸入を試みるようになって手続きに時間がかかるようになったということもありますが、私はこのガイドラインが出来たことはすごく大きな一歩だったなと思います。

 

参加者:イギリスのロンドンでは、様々な製品が販売されているのだと思いますが、安全でないものは販売されていないという前提で、皆さんは好みのものを選んで購入されているのでしょうか?品質の良いものはどの様に市場に確保されているのでしょうか?

吉田智賀子:CBD製品に関しては、すでに大手薬局等でも普通にサプリメントとして買えるようになっています。先ほどもお話しがあった製品の安全確保ということは、ノベルフード申請でご案内した通りですが、市場が拡大しているため、政府としても市場を守りたい、そのためにもルールを作って消費者を守るというシステムを構築し始めています。あとは今はオンライン上で製品の評判が見つけられるので、やはり質の低い製品を出していると悪い評判が広まって淘汰されていくのだと思います。

 

石塚伸一:時間が迫ってまいりましたが、最後に何かおっしゃりたいことがあればお願いします。

吉田智賀子:はい。世界の市場にはカンナビス製品が沢山出ているのですけれども、日本では大麻と聞くと、「ダメ。ゼッタイ。」という印象が強すぎて、海外から見ると「もったいないな」というところがあります。なので、こういった場でみんなが自由に議論をするというところから始めて、皆さんの大麻に関する印象論が変われば市場も大きくなるのかなと思います。本質を理解しないでダメだと思っている、ダメだと言われているからダメなんだという意見になっている。では、どうしてダメなんですか?と聞かれると答えられないという方が少なくないのではないでしょうか。より多くの方に正しい理解を持っていただくためにはメディアの発信力もありますし、石塚先生みたいな方々がどんどん情報発信をして、ダメだとされていたのは実は過去の政治的な要因があって、研究してみたら実は良いものだったんですということが一般知識として広まっていく、ということが重要なのかなと思います。そうすれば、CBDのみならず、ダメだと言われてきた薬物が、実は症状改善に効果があって、生活の質が上がりました、という人が増えればいいなと思っています。

 

石塚伸一:どうもありがとうございます。色々勉強になりました。こういうチャンスが増えると良いと本当に思います。COVID19のワクチンの時のそうでしたが、日本では禁止する一方でやっていますが、品質がきちんと保証できるものが日本国内で生産できる様になれば、日本製品を使う様になると思うのですが、そうでない場合は海外の製品を用いることになる。海外から入ってきたものが、クオリティが高いとも限らないので食品一般でそうである様に安い安全でない製品が入ってきた場合、コントロールができなくなってしまう恐れがある。

きちんと現実を見た上での世界の流れとしては、市場の中で適正な売買をして適切なものを使うというものになっているのに、今更犯罪化してアナクロニズムな方向に進んでしまうと国益に反することになってしまうのではないかと僕は思ったりしています。明治維新の前の江戸幕府みたいなのはやめて下さいと思ってしまいますね。今日はありがとうございました。